世界各国の言語でも、一人称はいくつかの種類があるかと思います。
英語であれば、「I」「my」「me」「mine」「myself」なども一人称となります。
そして、日本語にも、実に様々な一人称の言葉が存在します。
最もスタンダードは一人称は「私(watashi)」ですが、日常会話の中でもその他の一人称を使う人がとても多いのです。
この記事では、そんな「日本語における一人称の言葉の種類や時代、地方との違い」について解説していきたいと思います。
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Contents
日本で一般的によく使われる一人称の種類
それではまず、現代の日本でよく使われている一人称を挙げていきましょう。
実生活でよく使われている言葉なので、覚えておくことで日本を訪れた際に役立つことでしょう。
私(watashi):
ビジネスの会議で自己紹介をする際に、「私は〇〇と申します」と言います。
公式な文書やメールで自分の意見を述べる際に、「私の意見は〇〇です」と述べます。
わたくし(watakushi):
正式な場面や丁寧な場所での自己紹介において、「わたくしは〇〇と申します」という形で使用されます。
僕(boku):
友人やカジュアルな場面での自己紹介や会話で、「僕は〇〇だよ」と話します。
カジュアルな会話の中で自分の意見を述べる際に、「僕は〇〇だと思う」と言います。
俺(ore):
友人やカジュアルな会話での自己紹介や会話で、「俺は〇〇だよ」と話します。
カジュアルな会話の中で自分の意見を強めに主張する際に、「俺は〇〇だから」と言います。
自分(jibun):
自己紹介の場面で、「自分は〇〇です」と述べることができます。
自分自身について考えや意見を述べる際に、「自分の意見は〇〇だと思う」と言います。
あたし(atashi):
女性が友人やカジュアルな場面での自己紹介や会話で、「あたしは〇〇だよ」と話します。
カジュアルな会話の中で自分の意見を述べる際に、「あたしは〇〇だと思う」と言います。
ウチ(uchi):
方言や地域の特色がある会話で、「ウチは〇〇だよ」と話します。主に関西地方で使用されることが多いです。
これらの一人称表現は、状況や関係性によって使い分けられますので、適切な場面で自然に使用することが大切です。日本語を学ぶ過程で、これらの表現を習得し、使い方を熟知することで、より表現力豊かな会話ができるようになるでしょう。
ビジネスなどでは、「私」や「わたくし」「自分」といった少し固めの言葉をチョイスして使う傾向にあります。
家族や親しい友人などとの会話では、「俺」や「あたし」「ウチ」などを使用します。
特に大阪を中心とした関西地区では、女性が「ウチ」という一人称をよく使う傾向があります。
「僕」に関しては、非常に柔らかい言葉となるため、ビジネスでも親し過ぎる間柄でも違和感が生じてしまいます。
相手と若干親しくなった程度の間柄で使うケースが多くなります。
「僕」に関しては、基本的には男性が使用しますが、女性が意図的に使用するケースもあります。
歌の歌詞として登場する機会がとても多いので、日本の歌を聴く際は菓子にも注目してみましょう。
【時代の変化】
一人称の言葉は時代の変化に伴い、使用頻度やニュアンスが変化してきました。例えば、かつては男性が「私(わたし)」という一人称を使うことが主流でしたが、明治時代以降、西洋の影響を受けて「僕(ぼく)」や「俺(おれ)」という一人称が男性の間で一般化しました。
また、現代では女性が「僕(ぼく)」や「俺(おれ)」を使うことも増えてきており、性別による一人称の使い分けが柔軟になっています。
【地方との違い】
例えば、以下のような地方ごとの一人称表現が存在します。
- 北海道や東北地方:「わし」「おら」など、古風で独特な一人称表現が使われることがあります。これらは、地域の歴史や文化に根付いた表現と言えます。
- 関西地方:「わし」「おいら」など、カジュアルかつ親しみやすい一人称表現が特徴です。関西方言の影響があります。
- 九州地方:「わい」「おりゃ」など、力強く活発な印象を与える一人称表現が使われることがあります。九州方言の特徴が反映されています。
- 沖縄県:「じゃー」「ぬー」など、独自の方言に基づく一人称表現があります。沖縄の方言は「ウチ」を一人称として使うこともあります。
地方ごとの一人称表現は、地域の言語環境や文化的背景に由来しています。そのため、地方を訪れる際にはその地域の特徴に合わせた一人称表現を使うことで、地域の人々とのコミュニケーションを円滑にすることができます。
また、時代や地域だけでなく、個人の好みや性格、社会的な関係によっても一人称の言葉が異なることがあります。自分自身の個性に合った一人称表現を選ぶことも大切です。
日本では自分の名前を一人称として使うケースも多い
誰しも自分の名前を持っているかと思いますが、日本では自分の名前を一人称として使うケースもあります。
例えば「山田香(kaori yamada)」という名前だとしたならば、会話の冒頭に「香は○○だと思うな」「香ならそうするよ」というように自分の名前を付けるのです。
名前をそのまま使用するケースもありますし、「香的には」というように使い方をするケースもあります。
心理学的には、自分の名前を一人称として使う人は「自分を見てほしい」という欲求が強い人だと言われています。
いわゆる承認欲求が強いタイプです。
しかし、稀にそういった欲求がなくても、幼少期に自分の名前を一人称にしていた癖が直らずに大人になっても使い続ける人もいます。
日本では一人称の呼び方が時代と共に変化している
現代における日本での一人称は、前述した通り「私」や「僕」、「俺」、「自分」といった呼び方が多くなっていますが、古くからそういった一人称を使っていたわけではありません。
いくつかご紹介しましょう。
- 手前(temae):
古風な言葉遣いで、自己紹介や上下関係のある場面で使用されます。「手前は〇〇でござる」と言って自己紹介することがあります。
- あっし(asshi):
口語体や方言で使われる表現で、男性が友人や仲間とのカジュアルな会話で使用します。「あっしは〇〇だよ」と言って自己紹介したり、意見を述べたりします。
- あちき(achiki):
方言や時代劇などで使用される一人称表現です。主に女性が使用し、可愛らしさや親しみを感じさせる効果があります。「あちきは〇〇だよ」と自己紹介することがあります。
- おいら(oira):
友人やカジュアルな会話で使用される一人称表現です。「おいらは〇〇だよ」と話して自己紹介することや、意見を述べることがあります。
- 我(ware):
古風な言葉遣いや文学作品で使用される一人称表現です。「我は〇〇である」といった形で、自己紹介や文学的な表現に使われます。
- 余(yo):
古風な言葉遣いや時代劇で使用される一人称表現です。「余は〇〇でござる」といった形で、自己紹介や独特な話し方に使われます。
- 拙者(sessya):
古風な言葉遣いや時代劇で使用される一人称表現です。「拙者は〇〇でござる」といった形で、自己紹介や独特な話し方に使われます。
- 小生(syousei):
古風な言葉遣いや文学作品で使用される一人称表現です。「小生は〇〇でございます」といった形で、自己紹介や文学的な表現に使われます。
- 吾輩(wagahai):
古典文学作品『吾輩は猫である』から来た一人称表現です。「吾輩は〇〇である」という形で、自己紹介や独特な話し方に使われます。
このように、非常に多くの一人称が使われていました。
しかし、実生活でこういった一人称を使うケースはほとんどないものの、現代でも使われているケースは多々あります。
侍の時代の物語をドラマなどにした「時代劇(jidaigeki)」では、当然ながらこれらの一人称が使われていますし、漫画やアニメのキャラクターが現代の一人称ではなく昔の一人称を使っているケースも意外に多いのです。
さらに、現代人も、飲み会で酔っている時や、仲の良い友人などとふざけている時に「おいら」や「拙者」「吾輩」「余」などを使うこともあります。
そういった意味では、「昔の一人称だから覚えなくていいだろう」と思わずに、いくつか覚えておくと日本での生活の中で役立つかもしれません。
それ以外にも下記のような古い表現もいくつかありますので紹介しておきます。
- 某(それがし):
古風な言葉遣いで、武士や時代劇などで使用される一人称表現です。「某は〇〇でござる」といった形で、自己紹介や特定の立場を示す際に使われます。
- 麿(まろ):
古い時代や文学作品で使用される一人称表現です。「麿(まろ)は〇〇でござる」といった形で、自己紹介や特定の時代や背景を演出する際に使われます。
- 朕(ちん):
古代の天皇や王族が使用する一人称表現です。「朕は〇〇である」といった形で、自己紹介や特定の権威や尊厳を表現する際に使われます。
- 御身(みみ):
敬語表現で、自分自身を尊敬や丁寧さを持って表現する際に使われます。「御身は〇〇でございます」といった形で、自己紹介や謙虚さを表現する際に使われます。
- 儂(わし):
主に高齢者や男性が使用する一人称表現です。「儂は〇〇やで」といった形で、自己紹介や特定の地域や世代を示す際に使われます。
- あたい(atai):
主に女性が使用する一人称表現です。「あたいは〇〇やで」といった形で、自己紹介やカジュアルな会話で使用されます。
これらの一人称表現は、時代や地域、登場人物の性格や立場などに応じて使用されるものです。文学作品や歴史ドラマ、方言などから学ぶことで、より幅広い一人称表現を理解し、使いこなすことができるでしょう。
ただし、これらの表現は一部特殊なものであり、普段の会話やビジネスシーンでは使われることは少ないですが、文化や言語の多様性を知る上で興味深い要素です。
地方によっても独自の一人称がある
現代では、「自分」や「私」「僕」「俺」といった一人称が基本となりますが、実は地方では現在も違った一人称を使用することも多かったりします。
· おら(ora):
友人や家族とのカジュアルな会話や地元のイベントなどで使用されます。「おらは〇〇やで、今日も元気に行こうか!」と友人に声をかける場面などで使われます。
· あだす(adasu):
能登地方の方言として使用され、地元の人々との会話や地域のイベントなどで使われます。「あだすは〇〇じゃで、この辺りの名所を案内しましょうか?」と地元の人に尋ねる場面などで使われます。
· おどん(odon):
岐阜や愛知の一部地域で使われる表現で、友人や仲間との会話や地元のお祭りなどで使用されます。「おどんは〇〇やで、このお祭りは毎年楽しみなんじゃ!」と仲間との会話を盛り上げる場面などで使われます。
· わい(wai):
福岡や長崎の一部地域で使われる一人称表現で、友人や家族とのカジュアルな会話や地元のイベントなどで使用されます。「わいは〇〇やで、このイベントは毎年大勢の人が集まるんじゃよ!」と話す場面などで使われます。
· おりゃ(orya):
熊本や宮崎の一部地域で使われる一人称表現で、友人や仲間との会話や地元のイベントなどで使用されます。「おりゃは〇〇やで、この地域の名物料理は絶品じゃぞ!」と地元の魅力を語る場面などで使われます。
· わたい(watai):
京都や滋賀の一部地域で使われる一人称表現で、友人や家族との会話や地元のイベントなどで使用されます。「わたいは〇〇やで、この辺りには歴史的な名所がたくさんあるんじゃよ!」と自慢げに話す場面などで使われます。
これらの一人称表現は地域によって使われるため、日本全国のさまざまな地域でさまざまな表現が存在します。地域に滞在する際には、その地域の特色や文化に触れながら、適切な一人称表現を使いましょう。
都市部ではあまり使われなくなりましたが、高齢者を中心に地方ではよく使われるので、地方に行った際は耳にする機会があるかもしれません。
沖縄では、「わん(wan)」という一人称を使うこともあります。
まとめ
今回は、「日本語における一人称の言葉の種類や時代、地方との違い」について解説してきました。
日本で使われている一人称の多さに驚いた人も多いのではないでしょうか?
世界各国の言語と比べても、その多さは飛び抜けていると言えるでしょう。
旅行や仕事における長期滞在中は、様々な一人称を耳にするはずです。
なんの知識もないと混乱してしまう可能性があるので、ぜひ事前にある程度覚えておきましょう。
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